勇者は、だいたい魔王を倒す。
もちろんゲームだから、と言ってしまえばそれまでだけど、考えてみると結構おもしろい。
物語の最初にいる勇者はだいたい弱い。
装備も弱い。 お金もない。 仲間もいない。
その状態で、
「世界を救って、魔王を倒してください」
と言われる。
冷静に考えると、とんでもない目標だと思う。
現実で突然、
「あなたの最終目標は世界最強になることです」
と言われるようなものだ。
それでも勇者は旅に出て、最終的には魔王の城までたどり着く。
なぜだろう。
勇者だけ、ものすごく意志が強いのだろうか。
たぶん違う。
ゲームをしている側からすると、その理由はかなり単純だ。
最初から魔王を倒しに行かないからだ。
最初にやることは、だいたいスライムを倒すこと。
ゲームが始まって、いきなりラスボスの城には行かない。
まず町の人と話す。
近くの敵を倒す。
お金を貯める。
少し強い武器を買う。
次の町へ行く。
そこでまた新しい問題が起きる。
洞窟に入ったり、誰かを助けたり、新しい仲間に出会ったりする。
それを一つずつ終わらせていく。
気づいたころにはレベルが上がっていて、最初は絶対に勝てなかった敵にも勝てるようになっている。
そして、ずっと先にいたはずの魔王が、少しずつ現実的な相手になっていく。
面白いのは、プレイヤーが毎回、
「魔王を倒すために、今から何をすればいいんだろう」
と考える必要がないことだ。
次に行く町がある。
倒す敵がいる。
探すアイテムがある。
ゲーム側が、大きすぎる目的を小さく分けてくれている。
だからプレイヤーは、目の前にあることを一つずつ進められる。
人生もドラクエみたいだったらいいのに
前から、人生もこんな感じだったら楽なのにと思っていた。
自分には、やりたいことがたくさんある。
大きな目標を立てるのも好きだ。
でも、大きな目標を決めたあとに困る。
たとえば、
「プロサッカー選手になる」
と決める。
ゲームだったら、画面のどこかに次のミッションが表示されそうだ。
現在のミッション:フィジカルを強化する
その下には、
今日のタスク:30分走る
みたいに出てくる。
それを終わらせたらチェックが付く。
経験値が少し増える。
明日になったら、また次のタスクが出てくる。
それを繰り返しているうちに、気づいたら一つ上の目標を達成している。
でも、現実には何も表示されない。
「プロサッカー選手になる」
と決めても、翌朝スマホに、
「今日はこれをしてください」
とは出てこない。
自分で考えなければいけない。
走るのか。
筋トレをするのか。
ボールを蹴るのか。
試合を見るのか。
チームを探すのか。
全部必要そうに見える。
でも、全部を今日やることはできない。
大きな目標は決まっているのに、今日何をすればいいのか分からない。
ゲームでは当たり前にあった「道」が、現実にはない。
じゃあ、自分で作ればいい
だったら、作ればいいんじゃないかと思った。
最終目標を決める。
その下に、その目標を達成するために必要な目標を決める。
さらにその下に、その目標を達成するために必要な目標を決める。
最終的に、今日実際にできることまで下ろす。
たとえば、
プロサッカー選手になる
↓
より高いカテゴリーでプレーする
↓
そこで通用するフィジカルを作る
↓
週3回筋力トレーニングする
ここまで下ろせば、
「プロになる」
という遠い話が、
「今日トレーニングする」
に変わる。
もちろん、今日筋力トレーニングしたからといって、明日プロになれるわけではない。
ゲームみたいに「経験値+20」と表示されるわけでもない。
でも、少なくとも今日やっていることが、どこにつながっているのかは分かる。
それだけでも、私にとってはかなり違った。
ToDoだけでも、少し違った
これまでもToDoリストは使ってきた。
今日やることを書いて、終わったら消す。
便利だ。
でも、使っているうちに別の問題が出てきた。
「30分走る」
「スペイン語を勉強する」
「アプリを作る」
やることは分かる。
でも、それが何のためだったのかが見えなくなる。
ゲームで言えば、サブクエストだけを永遠にやっているような感じだ。
目の前のやることは分かるけれど、それが何のためなのかは分からない。
そうやって、どこへ向かっているのか分からなくなっていく。
逆に、目標だけを書いておいても動けない。
「プロになる」
「スペイン語を話せるようになる」
「サービスを作る」
それだけでは、今日の予定にはならない。
欲しかったのは、その間だった。
最終目標と、今日のToDoがつながっているもの。
上を見れば、自分がどこへ向かっているか分かる。
下を見れば、今日何をすればいいか分かる。
ゲームでは普通にあるこの構造を、現実の目標にも使えないだろうかと思った。
それで、Route to Meを作った
最初から「目標管理アプリを作ろう」と考えていたわけではない。
自分が欲しかった。
人生がゲームみたいに、
「次はこれ」
と教えてくれたらいいのにと思った。
もちろん、本当の人生には決められた攻略ルートなんてない。
どの目標を選ぶかも自分で決める。
途中で目標が変わることもある。
今日やるはずだったことができない日もある。
だから、ゲームそのものにはできない。
でも、
遠い目的を小さく分けて、今やることまでつなげる。
この部分なら作れた。
最終目標を決める。
途中の目標を作る。
さらに分ける。
最後に行動まで落とす。
そして、その中から今日やることを見る。
それを一つずつ終わらせていく。
Route to Meは、そこから始まった。
勇者が特別なのではなくて
勇者が魔王を倒せるのは、勇者の意志が誰よりも強いからではない。
少なくとも、ゲームを遊んでいる自分たちから見ればそうだ。
魔王を倒すまでの長い道の途中に、
次の町があって、
次の敵がいて、
次にやることがある。
その一つひとつを進めていたら、いつの間にか最初とは全然違う場所まで来ている。
人生はゲームほど親切ではない。
次のミッションも表示されない。
経験値も見えない。
だから、自分で作るしかない。
目標が達成できないと、
「自分は意志が弱い」
と思ってしまうことがある。
でも、もしかしたら問題はそこではないのかもしれない。
遠くにある目標と、今日やることがつながっていない。
ただ、それだけなのかもしれない。
だったら、まず道を作ってみる。
魔王を倒すことを考える前に、
今日のスライムを一匹倒すところから。